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Column de L'obabon

フレンチ・パラドックスの終焉!?

フレンチ・パラドックスという言葉をご存知でしょうか?

 

脂肪の摂取や喫煙は、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞等を起こすことが知られていますが、フランス人が脂肪を多く摂取し、喫煙率も高いにもかかわらず、近隣諸国よりも心筋梗塞の死亡者が少ないのです。この逆説的な疫学的に観察される現象が「フレンチ・パラドックス(フランスの逆説)」と呼ばれているのですが、フランス人はワインを多く摂取しているから、こうした現象が起きると考えられていました。

 

ところが世界的に権威のあるアメリカの医学雑誌『ランセット』誌が、20年以上にわたり195カ国において行われた研究の結果、アルコール摂取において無害な量はなく、1日1杯ワインを一年間飲み続けることで、様々な病気のリスクが0.5%高くなる、と報告。この内容は世界に衝撃を与えましたが、中でも「フレンチ・パラドックス」がフランス人のワイン文化に依拠していただけに、フランスにおける衝撃はさらに大きいものでした。

 

フランスのニュースでも、この論文に対するフランス人の反応が取り上げられていますが、多くのフランス人たちは、自分たちの「人生を楽しむための術」savoir-vivre や伝統文化が攻撃されていると感じたようです。

 

そもそもフランス人は、ほんの少し前までビストロで引っ掛けるワインやカルヴァドスが健康に悪いなどと考えていませんでした。例えば1984年、飲み過ぎ予防キャンペーンにおいて、フランス保健省は1杯以下の摂取なら健康に害がないと明言していました。それなのに研究によれば、1日1杯のアルコールの日常的な摂取が、ガン、心臓血管や脳血管系統の病気、肝硬変のリスクを高めるのに十分であり、さらにそれによって世界中で毎年10万人が亡くなっているというのですから。

 

一方フランスでは、男性が1日平均4.9杯、女性が1日平均2.9杯のアルコールを嗜んでおり、研究によって推奨されるアルコール・ゼロには程遠い現状です。ですから断酒がフランス人たちにとって極端なものと感じられると同時に、フランス人の生活に根付いたこの伝統文化に反する断酒の推奨に納得いかないフランス人が多いのは致し方ないのかもしれません。友人や家族との楽しい語らいに欠かせない、美味しいお料理やチーズとともにいただくワインを食卓から一掃するなんて、フランス式の生きる歓びが台無し、というわけです。

 

 

le 30 aout 2018
cyberbloom

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