クリスマスの季節が近づくと思い出すのが、アルザス地方のマルシェ・ド・ノエル(Marché de Noël、クリスマス市)の光景です。
数年前、ストラスブールのマルシェ・ド・ノエルを訪れる機会がありました。幻想的なイルミネーションが輝く町並みを眺めながら、可愛らしいお店が並ぶマルシェ・ド・ノエルでヴァン・ショー(Vin chaud、ホットワイン)をいただき、心も体もほっこり温まりました。夜中の12時まであちこち歩き回って、目指すはストラスブールの大聖堂。クリスマスのミサの見学です。このゴシック建築の大聖堂の尖塔は142メートルもあり、からくり時計が動く天文時計も有名。雪もうっすらと積もり、雰囲気満点でしたが、真夜中の大聖堂の寒さときたら尋常ではありませんでした。
アルザス地方の中心都市ストラスブールのマルシェ・ド・ノエルは、規模も最大級で、その始まりは1570年に遡ります。「もみの木のクリスマスツリー」はアルザスが発祥といわれ、ノエルが近づくと、クレベール広場には美しく飾りつけられた巨大なもみの木が登場します。カテドラル広場を中心に、ツリーに飾るさまざまな素材の飾り、手作りのオブシェや民芸品、クリスマスのお菓子を売る屋台が立ち並びます。
パン・デピス(pain d’épices スパイスの入ったパン)、ブレッゼル(bretzels 塩の粒がついた弾力のあるねじりパン)、パン・ア・ラ・カネル(pain à la cannelle シナモンシュガーの塊が水玉模様のように生地に練りこまれた丸いパン)は、甘いヴァン・ショーにとても合います。白ワインで作るヴァン・ショーや、アルコールが苦手な人のための蜂蜜入りホット・オレンジジュースもあります。
歴史的にドイツと結びつきが強いアルザス地方ですが、19世紀のドイツには青や緑の服を着たサンタクロースがいました。今のサンタの衣装が赤いのは、コカコーラのトレードカラーの赤い服を着たサンタが1930年代にコカコーラのポスターに登場したのが始まり。何か歴史的に意味のある色かと思えば、実はあからさまなコマーシャリズムの産物なんだそうです。
ストラスブールだけでなく、アルザス地方のいくつかの町でマルシェ・ド・ノエルが開催されますが、ストラスブールから電車で数十分でコルマール Colmar という町に着きます。この町は宮崎駿監督の『ハウルの動く城』の舞台のモデルになったことでも有名です。あの映画でも木組みの家が印象的でしたが、16世紀から17世紀のアルザス地方の典型的な建築です。コルマールの旧市街の中心には「プチット・ヴニーズ」(Petite Venise 小さなベニス)と呼ばれる地区があり、かつて農産物の運搬に利用された狭い運河沿いや、粉雪の舞う中世の石畳の通りは、暖かい光に包まれて、まるで御伽噺の世界です。
“Le village de Noël au pied du sapin 2010” by Erics67 – Own work. Licensed under CC BY 3.0 via Wikimedia Commons.
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