フランスは緯度が高い位置にあるので、夏は日照時間が大変長く、夏至の時期は5時半に明るくなり、夜は22時を過ぎてもまだ明るいことがあります。夏のバカンスのあいだは、なかなか陽が沈まないのをいいことに、だらだらとおしゃべりをしながら食事をするのが何にもまさる楽しみでした。一方冬になると日照時間がぐっと短くなり、冬至の時期は8時半まで明るくならず、16時半にはもう日が沈みます。
そこで夏の長い日照時間を有効に利用するため(アメリカ英語ではdaylight saving time と言います)、4月から10月までは夏時間、11月から3月までは冬時間を採用しています。3月の最終日曜日、2015年は3月29日の日曜日に夏時間になりますが、深夜2時が3時に変更されるので、就寝前にうっかり1時間時計を進めておくのを忘れても仕事に遅刻!という事態にはならないはず。でも何だか1時間睡眠時間が削られて損をしたような気分になります。
昔、パリに住んでいたとき、週末にウイーン旅行に出かけたことがありました。ちょうど3月最終日曜日の朝の便でパリに戻ることになっていたため、時間を間違えないかとはらはらしたものです。念のため早く空港に着いておこうと朝ご飯も食べずにホテルを後にしました。
また、夏時間が終る直前の10月下旬、大学へ行くのがとてもつらかったことを思い出します。授業は午前8時30分から始まるのですが、そのころは大学まで1時間半かかったので家を出るのは午前7時でした。夏時間で1時間早めてあるので、実際は午前6時ということになります。外はまだ真っ暗で、日に日に寒くなっていく中、気が滅入る通学時間でした。実際、さらに緯度の高い北欧では長く寒い冬のあいだは自殺が増え、それを季節性情動障害(SAD)と呼ぶそうです。
日本では、占領軍の施政下にあった1948年から1951年の間のみ夏時間が実施されました。その後も、省エネの面から過去に何度か国全体での導入が検討されてきましたが、夏時間が突如クローズアップされ、実施されたのは、記憶に新しい2011年の東日本大震災後の電力危機の際でした。多くの企業や自治体が自主的に節電のために夏時間を導入したのでした。
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