クリスマスの季節、日本では華やかに飾り付けされたクリスマスツリーが街にお目見えしますが、カトリックの国フランスでは、それだけではなく教会の中や街角にイエス・キリストが誕生した場面を再現したクレッシュ(crèche)という模型も飾られます。日本の方にはあまり馴染みがないので、どういうものか少々説明が必要かもしれませんね。
まず、クレッシュという言葉はラテン語の cripia に語源があり家畜小屋を意味していました(現在では3歳以下の幼児を預かる保育園も、クレッシュと呼ばれています)。つまり、クレッシュはキリストが生まれとされる馬小屋を指す言葉だったのです。
キリスト生誕の再現は12世紀、フランシスコ会の創設者アッシジのサン・フランチェスコが始めたと言われています。当時はクリスマスのミサを行うときに、人間が登場人物となってこの光景を再現したそうです。フランス革命の頃から、プロヴァンス地方の家庭でキリスト生誕の光景を再現する模型が飾られるようになり、フランス全土へと広がりました。19世紀になると、プロヴァンス地方で粘土を焼いてつくられたサントン(プロヴァンスの言葉で「小さな聖人」の意味)という人形で作ったクレッシュが普及します。
まず馬小屋の中で生まれたばかりのイエス、聖母マリアとジョゼフ、ロバや牛などの人形が配置され、それにプラスして空に東方の三博士を導く流星が光っているものなど、様々なバリエーションがあるようです。キリストの降誕を待ち望む期間「待降節(たいこうせつ)」(アドベント、降臨節とも言う)の第一日曜日、あるいはニコラス聖人の日(12月6日)にクレッシュを飾り、キリストが神殿に行った聖燭祭(2月2日)まで飾られます。その間の1月6日に東方の三博士の来訪を記念するエピファニー(公現日)があります。フェーブの入ったガレット・デ・ロワを食べる日ですね。
パリの中心、シテ島にあるノートルダム大聖堂(Cathédrale Notre-Damde de Paris)では、大聖堂の正面に大きなクリスマス・ツリー(Sapin de Noël)、内部には、ひときわ大きくて豪華なクレッシュが飾られています。イエスの人形は25日になって始めてクレッシュに加えられるので、ノートルダム大聖堂でイエスが加わる前の光景と加わった後の光景の両方、機会があったらぜひご覧になってくださいね。
By Ericwaltr (Own work) [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons
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