パリ・プラージュの plage はフランス語で「砂浜」を意味します。フランスでは、雇用主が従業員に対して7月か8月に1か月間休暇を取らせる事が義務付けられており、違反すると罰せられるほどですが、この長い夏休みを取った人々は、家族や友人と海辺や地方に出かけ、そこでのんびりと長期休暇を楽しむのが慣例となっていました。ところが景気後退とともに、都市部の住民の中に、休暇はあるけれど、交通費や長期に渡る滞在費まで捻出できない人々が増加するという問題が出てきました。
そこで2002年から、当時のベルトラン・ドラノエ・パリ市長の提案により、パリに残ることを余儀なくされている住民たちの避暑地として、7月・8月とセーヌ河岸に一時的に人工のビーチが作られることになりました。その間、川の土手にある車道を封鎖し、そこに砂のビーチを設置し、椰子の木を植え、様々なイベントを行ったりします。最初は、右岸にビーチが1つ設置されていただけでしたが、2006年には、左岸に2つ目のビーチが追加され、名称が単数形の Paris Plage から複数形の Paris Plages に変わりました。
こうして暑苦しい都市空間は、日焼け止めクリームの香りに満たされ、ビーチパラソルや折りたたみ式デッキチェアが一気にバカンス気分を盛り上げてくれます。相変わらずストレスの多いパリで生活しているパリジャン・パリジェンヌたちは、パリにいながらにして夏の夕べや週末を浜辺で過ごすことが出来るようになったのです!
さて、今や大人気のパリ・プラージュ、今年も老若男女皆で楽しめるイベントが目白押しです。開催期間は7月19日から8月17日まで、会場は、4区のパリ市庁舎前広場とそこからほど近いセーヌ川沿いのジョルジュ・ポンピドゥー幹線道路、19区のヴィレット貯水池周辺の3箇所です。ビーチバレーボール、ペタンク、太極拳、ラグビー、マリンスポーツなどのスポーツ系イベント、FNAC(フナック、フランスの家電量販店)スポンサーの無料コンサートやピクサーアニメ『レミーのおいしいレストラン』(原題 Ratatouille はフランス南部の野菜煮込み料理のラタトゥイユのこと)の上映会など、すべて無料です。
実は神戸でも神戸市の主催でパリプラージュをモデルに「神戸プラージュ」が行われたのをご存じでしょうか。2010年に神戸港の新港第1突堤に約3,000 平方メートルの人工の砂浜が出現しました。砂浜では来場者がビーチスポーツや港の夜景を楽しんだり、砂浜に埋め込まれたLED照明が醸し出す幻想的な雰囲気を味わっていました。また海上自衛隊の音楽隊のコンサートや子供向けのイベントも多数ありました。しかし、それは2010年1年限りのイベントで終わってしまったようです。また再開して、神戸の夏の風物詩として定着して欲しいものですね。
Index Actualité