今週末の9月20日、21日は Journées du Patrimoine (文化遺産の日) で、エリゼ宮 (=フランス共和国大統領官邸) を始めとする、フランスの1500にのぼる公的な建物が一般公開されます。その多くは歴史的建造物で、その中でもエリゼ宮は目玉中の目玉です。その日は長時間待たされることを覚悟で、みんなエリゼ宮の門の前に長蛇の列を作ります(待っているあいだ、コーヒーの差し入れがあったりします)。
去年は、エリゼ宮に2万人、上院 Sénat に2万6千人、下院 Assemblée nationale に1万5千人が訪れました。フランス全体では120万人が参加したとのこと。もちろん入場無料で、景気が悪いときは無料のイベントはありがたいものです。また午前中、オランド大統領が直々に訪問客を出迎え、1時間半にわたって握手をしたり、記念撮影をしたりしました。サルコジ大統領の時代はカーラ夫人も登場しました。去年はもちろんヴァレリー・トリエルヴェレールさんがパートナーを務めましたが、今年は誰がその代役を務めるのでしょうか。
エリゼ宮の中は本当に素晴らしく、それぞれの部屋に独特の趣きがあって、見ごたえがあります。人数制限をしているせいか、宮殿の中をゆったり自分のペースで見学でき、ほとんどの場所で混み合うことがありません。係の人に質問すれば説明もしてもらえます。多くの報道陣もつめかけており、大統領や訪問客にインタビューをして、その様子が当日の重要なニュースになります。晩餐会が行われる「祝宴の間」では、晩餐会さながらに食器が並べられ、巨大なシャンデリアと天井のデコレーションとともに圧倒されました(写真)。
「祝宴の間」はパリ万博の1889年に完成し、万博の行事が行われました。現在は大統領の就任式や公式晩餐会などの公式行事が行われています。有名なエリゼ宮のクリスマスツリーもこの部屋に飾られます。ナポレオン1世の元執務室で、現在は大統領の私用の書斎に使われている「肖像画の間」、エリゼ宮で最も価値のある家具と言われるルイ15世様式の執務机が置かれ、その上で大統領が執務を行う「黄金の間」などを次々と廻ります。
「これは彼ら(=エリゼ宮を訪れた人たち)の所有物です。将来ここに住む者たち、大統領としてここに住んだ者たちは、借家人に過ぎません。これはフランス人のものなのです」。
つまり、エリゼ宮は大統領のものではなく、あくまでフランス国民のものだと言うことです。文化遺産の日は、大統領や官僚たちにお情けで国の遺産を見せてもらう日ではなく、フランス国民がそれらを所有していることを確認する日だと言うわけです。これもフランスらしい発想ですね。
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