今回はベルギーの話をしましょう。ベルギーはフランスの北に位置する国で、南半分はフランス語圏です。不幸なことに今年の3月22日、ベルギーの空港と地下鉄でテロが起こってしまいましたが、普通の日本人はベルギーと言うとブリュージュのようなきれいな町や、チョコレートやワッフルを想像すると思います。そこがテロの温床になっているなんて全然ピンとこないでしょう。
ベルギーは小国ですが、その首都ブリュッセルはヨーロッパにおいて重要な都市と位置づけられ、欧州会議や NATO(北大西洋条約機構)の本部も置かれています。独仏に挟まれた中立国家という立ち位置を生かし、ヨーロッパ統合(EU)にも積極的に貢献してきました。一方でベルギーはアルプスを越えて北上したゲルマン系の文化と、地中海沿いのラテン系の文化がヨーロッパの北部で再び出会った「2つのヨーロッパの潮目」になっています。ベルギーはカトリックの国ですが、プロテスタントの国のオランダと接し、4分の1がプロテスタントです。そういう境界的な地域には、今回のテロの温床になった大きなムスリム居住区のような、言語的マイノリティの共同体が生まれやすいと言えます。また言語や文化の分断はなわばり意識を生み、警備体制も脆弱になりやすいのでしょう。
ベルギーの食文化に目を向けてみましょう。9月にブリュッセルの中心にある大きな広場「グランプラス Grand-Place 」(世界遺産でもあります!)でビール祭りが行われ、グランプラスには40の醸造所が集まります。私はビール派で、ホワイトビールやフルーツビールなど、いろんなベルギーのビールを飲み比べるのが好きですが、ベルギーには選びきれないくらい、多くの種類の地ビールが醸造されています。日本でもデュベル Duvel や、修道院で造られるシメイ Chimay などが知られています。最近日本のコンビニでもデュベルが買えることがありますが、600円近くします。現地で買うと1本1ユーロ以下で、現地だと同じ料金で6本買える計算です。ビール文化は国境を越えてフランスに入っても続いています。北フランスではワインよりもビールが好まれ、チーズもビールとのマリアージュがお奨めです。
またベルギーに行くと、バケツにいっぱいのムール貝も食べたくなります。シェ・レオン Chez Léon というブリュッセル発のチェーン店がフランスにもたくさんあります。そしてムール貝には山盛りのフリット(フライドポテト)が付いてきます。ベルギーのフリットはジャガイモと油の種類(馬の油で揚げることも!)にもこだわっていて、Baraque à frites というフリットの屋台も人気があります。
ワインの生産地として有名なブルゴーニュ地方の代表的な料理、ブッフ・ブルギニョンBoeuf bourguignon は当地の赤ワインを使った煮込みの料理になっていますが、ベルギーの煮込み料理の多くは「ビール煮込み」です。いちばん有名なのは Carbonnade Flamande 。こだわりたければシメイで牛肉(鶏や豚でもOK)を煮込むと美味しくなります。日本でシメイを買って使うと高級料理になってしまいますが(笑)
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