昨年12月に企業の休暇スケジュールを簡素化する法律が可決されました。それまで、パリにあるパン屋の半数が7月に店を開け、残りの半数は8月に店を開けるというローテーションをとっていました。近所にパン屋が2軒あれば、バカンスのあいだでもどちらかが開いていました。しかし法律が可決され、パン屋の主人は好きなときにバカンスに行けるようになりました。縛りがなくなると、パリの多くのパン屋が8月に店を閉めたのです。やはり7月よりも8月にバカンスを取りたいのでしょうか。そのため8月にパリで焼きたてのバゲットを見つけるのは難しくなったのです。
新しい法律ができるまで、パリのパン屋は通りごとにリストアップされ、2つのグループの分けられていました。それを見ながら一年ごとに交互に7月に開ける店と8月に開ける店を割り振っていたのです。薬局も同じ決まりを課されていました。この規則に従わないパン屋は、不当休暇一日につき11ユーロから33ユーロの罰金が課される可能性がありました。
今年の8月、一軒の店の入り口にパンを買い求める人々が数十メートルの列を作っていました。「8月に開いているパン屋さんを見つけるのにこんなに苦労したのは初めてです」、14区のパン屋さんの前で1人の女性がテレビのインタビューに答えていました。「まったく、印象が悪いです。多くの旅行者がパリに来るというのに。バカンス中はサンドイッチをたくさん食べるし、もしパンがなかったらどうするんですか?」
この悪いイメージは外国にすぐ広がりました。隣の国のイギリス人はパリの「パン不足」をすぐに叫び始めました。「フランスはパン屋が自由にバカンスを取ることを許可されて以来、バゲットの危機を恐れている」と英紙テレグラフは見出しを付けました。記事はイギリス人女性の声を引用していました「数日前、1本のバゲットを買おうと出かけましたが、最も近い2軒のパン屋が同時に閉まっていたのです。こんなことは初めてです」。パリに来ている観光客だけではありません、パリに残ったフランス人アーティストも激しく抗議していました。私たちはスーパーで半分しか焼けてない変なミニバゲットを買って、オーブンで焼き直さなきゃいけなかったんだ」
パリのパン屋の同業組合の幹部は「規則がどうであろうと、みんながパンを買えるように同業者のあいだで調整し続けます。パン屋がみんな同時にバカンスに行くことに何の利益もないのですから。ましてや同時にパリにいることにも」と説明しました。つまり近くのパン屋どうしでコミュニケーションを取って、休む月をうまく調整することが望まれていたのです。しかしバカンスに行くことを知らされないこともありました。
モンマルトルのような観光地区では、2軒に1軒は開いていましたが、あまり観光客が来ないパリの他の地区、特に14区などは、それどころではありませんでした。しかしこの時期店を開けていたパン屋は売り上げ増になったようです。
バカンス中、こうやってパン不足が起こってしまったわけですが、フランス人はいまや1人につき平均で1日160グラムのパン、つまりバゲット半分しか食べないそうです。1970年にはひとり1本、1900年には3本食べていたと言うのに。
□Les boulangers parisiens peuvent partir en vacances quand ils veulent(Le Soir. 11 Août 2015)参照
“Morning baguettes” by Julie Kertesz from Paris neighbourhood, France – Flickr. Licensed under CC 表示 2.0 via wikimadia commons.
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